モンゴル経済の屋台骨を担う石炭産業が転換期を迎えている。厳しい価格下落局面を脱し、原料炭と一般炭の価格が安定的に上昇するとの期待が、輸出収入を下支えする。新たな国境検問所、鉄道接続、タバントルゴイ鉱床の新規鉱山開発を踏まえた長期戦略では、2050年の石炭輸出量を1億2,651万トンと見込む。
 2026年3月時点で有効な鉱物資源関連の特別許可は計2,820件。このうち石炭採掘の許可は325件で、原稿によれば18.2%を占める。許可区域の面積は国土のわずか0.42%だが、経済に及ぼす影響はこれを大きく上回る。有効な許可の範囲内で登録された石炭埋蔵量は373億トンに達し、内訳は褐炭203億トン、瀝青炭169億トン、無煙炭7,000万トンとなっている。長期的な供給能力の大きさを示す数字だ。
 2025年には鉱業会社99社が操業し、石炭生産量は前年比8.0%増の1億52万トンに達した。その大半に当たる9,002万トンを輸出し、経済を支えた。
 輸出の主要な出口である国境検問所の利用は、ガシュンソハイト1カ所に45.4%が集中している。依存度の高さが、検問所の混雑と物流リスクを高止まりさせている。
 検問所別の輸出量には増加と変動が見られる。2025年はガシュンソハイトが3,909万700トン、シベーフレンが3,228万4,200トンとなった。2026年上半期だけでも、それぞれ3,334万1,200トン、2,642万3,500トンを輸出した。半年で前年通年に「ほぼ」迫る水準となったことは、輸出の勢いの強さを示している。
 ただ、輸出品の構成には課題が残る。2025年と2026年はいずれも、未選炭の石炭と強粘結炭が主力で、高付加価値化につながる高度加工の進展は遅い。
中国の原料炭市場
 2026年第1四半期の中国の原料炭スポット市場は、2、3月に比較的安定し、上昇傾向を示した。地域の需要回復を示す動きといえる。専門家は、この時期のモンゴルによる安定供給と価格政策が、隣国市場の需給均衡を維持するうえで重要な役割を果たしたと指摘している。
 外部要因も市場に影響した。オーストラリアの主要産地では大雨により採掘と物流が停滞し、高品質原料炭の価格が上昇した。モンゴルにとっては、有利な輸出価格を確保する機会となった。
 2026年通年の原料炭市場は2025年より安定し、平均価格も高くなると期待されている。一方、一般炭は港湾在庫が高水準にあるものの、天候や季節的な電力消費の変化による短期的な価格変動が引き続き頻発している。
取引所売買が主要輸出経路に
 2025年8月20日付の政府決議第55号は、鉱産物を輸出する企業に対し、特定品目の少なくとも25%を取引所で売買することを義務付けた。業界の透明性を高める大きな転換となり、企業の売上高を1,000億トゥグルグ増加させる基盤を築いた。累積する鉱物資源使用料の未払債務のうち約1兆トゥグルグを解消する余地も生まれ、投資環境の改善と課税基盤の拡大につながった。
 取引所では計2,097回の取引が成立し、総取引額は96億4,000万米ドルに達した。このうち石炭だけで85億米ドル、8,240万トンを占めた。取引量は年々増える傾向にあり、2026年には鉱産物2,700万トンの売買を目標としている。
 モンゴルは2023年1月に取引所経由の石炭輸出を開始した。直近3年間に売買された石炭は計5,910万トンで、石炭輸出全体の24.31%を占める。取引所売買は主要な輸出経路の一つとして定着している。
 一方、モンゴル石炭協会の報告書「モンゴル石炭生産概況―石炭産業2026年上半期」は、鉱物資源使用料の算定に当たり、海外市場の指数と実際の契約価格を整合させ、公平性を確保するため、より柔軟な仕組みを導入する必要があると指摘した。
 2025年には11種類の石炭が取引所で売買された。加工段階別では、原炭が49.9%の1,087万トン、選炭・加工済み石炭が50.1%の1,092万トンを占めた。未加工のまま輸出する形から、一定の加工を施して輸出する方向へ徐々に移行していることを示す前向きな動きだ。今後の成長には法制度の改革が不可欠で、原稿では鉱物資源法改正案が審議段階にあるとしている。
価格下落局面を脱し回復へ
 石炭価格は変動を伴う循環をたどってきた。前年比の下落率は2023年が12.1~19.6%、2024年が11.4~24.0%となり、2025年7月に底を打った後、緩やかな上昇傾向に転じた。
 2026年は価格変動が比較的落ち着く見通しだ。品目別では、2025年に33.6%下落した選炭済み原料炭が2026年は18%上昇する見込み。未選炭の原料炭は26%、弱粘結炭と一般炭はそれぞれ15%上昇すると予想される。新たな国境検問所や鉄道接続、タバントルゴイ鉱床の新規鉱山建設を基盤とする長期戦略では、2050年の石炭輸出量を1億2,651万トンと見込んでいる。
 石炭産業が価格下落の循環を脱して回復軌道に入ったことは望ましい。取引所売買による透明性の向上と輸出数量の拡大は、経済にとって「酸素」に当たる。
 しかし、統計の背後にある実態を見れば、数量を追い求める一方で、質の面では一歩も前進していないという厳しい現実が浮かぶ。海外市場に送り出す製品の大半は、付加価値を伴わない未加工品のままであり、物流の主軸も依然として一つの検問所に依存している。
 
 情報源:Mongolian Mining Journal